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フェチ(21)

「川瀬くん、今までありがとう」
智美さんの本当の最後の夜、僕は社長と智美さんとともに、高級なレストランにいた。
智美さんの最後の送別会だ。
「こちらこそ今までありがとうございました。直美ちゃん、社長のこと、よろしくね」
「あ、はい、任せてください。私こそ短い間でしたけど、いろいろありがとうございました」
「それじゃ始めようか」
僕たちはワインで乾杯した。
そして料理が運ばれてきた。
すごくおいしい料理だった。


「そう言えば、塚本くんはあの話、川瀬くんにしたのか?」
「あの話って?」
社長は何の話をしようとしているのか分からなかった。
「面接のときに聞かされた話だよ」
僕は思わず顔が赤くなるのを感じた。
「何なんですか、あの話って?」
智美さんが興味を持って聞いてきた。
「もう最後なんだし、川瀬くんに話しておいた方がいいんじゃないかな」
「そうですか…。それじゃ話しますけど、それほど大した話じゃないですよ。実はですね、……………」
僕はあの日の話をした。
「へえ、直美ちゃんって私に憧れてくれたんだ。もっと早く教えてくれれば、もっと優しく教えてあげたのに」
「智美さんは充分優しかったですよ」
「そうかな。それじゃそういうことにしておいて」
雰囲気がなごんだことで、僕はずっと気になっていたことを聞くことにした。
「智美さんはこの会社を辞めてどうされるんですか?」
「あれ?知らなかったの?社長、話さなかったんですか?」
「ああ、プライベートなことだし、話すんだったら本人からの方がいいだろうと思って」
「確かにそれもそうですね」
そう言って、智美さんは僕の方を見た。
そしてこれまで見せた最高の笑顔を浮かべて言った。
「実はね、私、結婚するんだ」
僕はその言葉に驚き、何も言葉を発せられなかった。
「彼、アメリカ人なの。アメリカだったら、同性婚が認められてるでしょ?だから彼とアメリカで結婚するの」
「えっ、アメリカに行っちゃうんですか?」
「そうよ。そこでお嫁さんになるの」
「…そうなんですか。おめでとうございます」
「ありがとう。直美ちゃんも社長とうまくやってね」
「えっ!」
「社長、直美ちゃんのこと、好きでしょ?社長って本当に分かりやすいですもんね」
ちょっとおどけたように智美さんは北原社長に話した。
北原社長はその言葉には返事しなかった。
しかし態度には動揺が現れていた。
何も返事しなくても、返事しているようなものだった。
「そういうことなの。だから、ね?」
微妙な沈黙が流れた。
やがてそれを打ち破るように智美さんが立ち上がった。
「それじゃ、私は先に帰ります。今まで本当にありがとうございました。落ち着いたら遊びに来てくださいね」
そう言って、店から出て行った。
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コメント

#あらら……
男性を女装させて『秘書』として雇うのは、ビジネスだけの関係と割り切って『間違いを犯さない』為だとばかり思ってましたのに……。
この社長さん、『間違いを犯す』気満々ですねぇ……^^;

この分だと、直美ちゃんが襲われるのもそう遠くないですねぇ……。
まあ、敢えて襲わせて責任取らせるという手も……って、この手は『純女』でしか出来ませんねぇ……^^;
by: 藍 | 2016/07/13 02:47 | URL [編集] | page top↑

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