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フェチ(20)

僕の秘書業務が始まった。
僕の仕事の大部分は社長のスケジュール管理と接客ということだ。

社長より早く出社して、その日のスケジュールを印刷して、机の上に置いておく。
社長が出勤したら、すぐに口頭でその内容を伝えるのだ。
社長は自らメールを使いこなすが、なかなかメール処理の時間がとれないため、メールの代筆もあるらしい。
さすがに最後は確認してから自ら発信するが、文章そのものは秘書が書いたものということも多いとのことだ。

そして、もうひとつが接客だ。
社長のところには結構な数のお客様がやってくるらしい。
初日でさえ、3社のお客様がやってきた。
そのときのお茶出しは最低限しなくてはいけない。
もちろん重要なお客様にはお茶菓子も必要だ。
それを切らさないように準備をしておくのも秘書の仕事とのことだ。
今は智美さんが手伝ってくれるけど、一人になったときはかなり大変になりそうだ。
「適当にやっておけばいいわよ」と智美さんは言うが、そんなふうにできるまではかなりの時間が必要だと感じた。

とにかく社長は忙しいので、そのフォローを心がけなくてはいけないのだ。
秘書というのはある意味社長以上に大変かもしれない。
本当に僕に務まるだろうか?

そんな不安を抱きながらも、1週間はあっという間に過ぎた。
そして、智美さんが予告したように、僕の採用は決定した。
大きなミスこそなかったが、充分に仕事ができたとは思えなかった。
僕の採用は、やはり僕が社長のタイプのせいなのだろうか。
少し先行き不安になってきた。


いよいよ智美さんも残すところあと3日という日、智美さんの送別会が会社全員参加で開催された。
強く感じたのは智美さんが皆に慕われていたこと。
いろんな部署の人と気楽に挨拶を交わしていた。
僕も10日ほど働いたが、まだ社長以外とほとんど会話を交わしていない。
女性社員は7人いるが、見破られそうで近寄るのも怖いのだ。
僕は智美さんの代わりなんてできそうもない。
そう思った。
僕は僕のできる範囲でやっていくしかないと開き直るしかないのだ。
ただでさえ女装で働くという通常では考えられない状況なのだ。
あれもこれもと頑張れば僕自身が参ってしまう。
今は秘書業務を頑張ろう。
それしかないのだ。

一応その宴は僕の歓迎会ということにもなっていた。
僕は女性だと認識されているせいか、皆から優しくされた。
僕もそれなりに歓迎されているようだ。
そして優しくはされるが、酒の席であってもあからさまに口説かれるようなこともなかった。
皆、紳士なんだな。
そのとき僕はそう思っていた。
そして智美さんがいなくなって僕ひとりになっても何とかなりそうな気も少しだけしていた。
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コメント

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by: | 2016/06/12 23:20 | URL [編集] | page top↑
#恐らく……
『バレていない』と思っているのは当人だけ、なのでしょうね^^
社内では『社長が秘書として雇うのは女装の似合う男性』というのはもはや『公然の秘密』になっているとしか……。
でなければ、飲み会で酒の入った状況で『冗談半分でも口説かれない』というのはあまりに不自然です^^

P.S.
>あの藍さんですか?
ご推察通りです^^
というか、私のHN『騙って』得する人間がそうそういるとも思えないんですけども……^^;
by: 藍 | 2016/06/13 23:35 | URL [編集] | page top↑

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