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フェチ(17)

「それじゃ、僕からの質問、いいかな?」
僕が腹を立てていることには気がつかないのか、男は何事もなかったかのように言った。
「何ですか!」
僕は少し怒りながら聞いた。
「君の今の恰好は趣味なの?」
男の質問に僕はどう答えていいのか分からなかった。
すると男が言った。
「もしその姿で面接に来てくれたら、採用してたんだけどな」
「えっ?」
思わぬ言葉に警戒していたことが頭から消えてしまった。

「実は僕は女性が苦手なんだ。今は少しは慣れたんだが、やっぱりまだ緊張する。だから秘書は男性のほうがいいんだが、取引先には女性秘書のほうが受けがいい。それを解決するのが…」
「わたしのような存在、ですか?」
話が思わぬ方向に向かっているような気がする。
「そう。ところで、もう一度聞くけど、君のその恰好は趣味なの?それとも女性として生きたいの?」
どう回答すればいいのか相手の顔をうかがった。
僕が何も言わないので、男性は言葉を続けた。
「もし女性として働きたいのなら、採用を検討しよう」
この男性はどういう立場なのだろうか?
面接官に睨まれていたくらいの奴にそんな権限はあるんだろうか?
「あ、あのぉ、あなたは…」
「えっ、僕のこと、分かってないの?それで面接に来るのはいただけないな。それじゃやっぱり不採用のままにしておこうかな?」
男性は楽しそうに笑いながら話した。
「僕はあの会社の社長の北原敬三だ」
「えっ!」
驚いた。
まさか社長だったなんて。
でもあのとき…。
「面談のとき、面接官から注意されてたじゃないですか?」
「ああ、あれ。どんな人間が受けに来るかを見たかったんだけど、僕が意見を言うと、下の者は従わなくちゃいけないだろ?だから、僕は何も質問しないって約束で、君たちのことを見てたんだ。だから、一言でも質問すると、それは約束違反ってことになるわけさ」
「そう…だったんですか?」
「で、どうする?採用を検討ってことでいいかな?」
「…考えさせていただいてよろしいですか?」
「ああ、もちろんだ。ただし無条件に採用というわけにはいかない。少なくとも君の秘書としての能力を見たい。もし女性として働く気になれば1週間テストということで僕の秘書をしてもらいたい」

テスト!
テストがあるのか?
考えてみれば当然の話だ。
それにしても、思わぬところから就職のチャンスが転がり込んできた。
女装もできて、仕事もゲットできるのだ。
何を迷う理由があるのか?
24時間、女装するくらいなら、それほど難しくない。
しかし趣味の女装ならともかく、女性として働くことなんてできるんだろうか?
他人の目も気になる。
社長みたいにすぐに見破る人だっているだろう。
それにしてもこのチャンスは簡単に諦めるには勿体ない気がする。
僕はどうすべきか分からなくなっていた。

その日から悶々と悩む日が始まった。


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コメント

#はじめまして
僕だったら女性として働く道を選んじゃうかもしれないです。もし女性でないと入れない女性用お風呂とかに入ることがあってもバレないように、この会社で秘書になったら性転換手術して、身体も女の子にしちゃうと思います。
by: コウ | 2016/05/08 19:02 | URL [編集] | page top↑
#コメントありがとうございます
コウ さんへ
沙亜矢です。
お返事ずっとできてなくて申し訳ございません。
いつでも男の姿に戻れるという安心感があるからこそ、女装するという面もあると思うんです。
でも、直彦くんはどうするんでしょうね。
恰好いい女性になるために性転換しちゃうかもしれませんね。
by: 沙亜矢 | 2016/06/12 00:54 | URL [編集] | page top↑

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