馨と香緒里の事情(12)

ある日、"香緒里"は社長直々に夕食に招待された。脆弱性対策の頑張りのご褒美だそうだ。"香緒里"は高そうなフランス料理に連れていかれた。
「こんな高級なレストラン、大丈夫ですか?」
「どうせ会社の交際費で落とすから、佐野くんは心配しないでいい」
「でもこんな上品なところじゃ、食べた気がしませんから」
「じゃあ、佐野くんは何がいいんだ?」
「居酒屋で十分です」
「ははは、私もそっちの方がいいんだが、たまの若くて美しいレディとのデートなんだから、これくらいの店にしないとな」
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馨と香緒里の事情(11)

ある日、"香緒里"は何気なく自社のWebサイトを見ていた。
ちょっと悪戯心を起こして、UNIXのコマンドが効くか試してみた。
簡単に効いた。passwdファイルの中身が全て表示された。
"香緒里"はそのことを河野に話した。
「よく分かんないんだけど、それって大変なことなの?」
「企業イメージという意味ではすごい問題だと思います」
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馨と香緒里の事情(10)

次の日、"早坂"が会社から出ようとすると呼び止められた。
「早坂くん、よね?」
「はい、そうですが...」
「私、河野って言うの。佐野さんと一緒に受付やってるんだけど、佐野さんから聞いてるかな?」
「はい、お名前だけは」
「それじゃ話は早いわね。単刀直入に聞くけど、今日は何か予定ある?」
「いえ、別に。もう帰るだけですけど」
「なら私と食事に付き合ってもらえないかな、ダメ?」
"早坂"は畳み掛けるような河野の勢いに負けて、一緒に食事に行くことになってしまった。
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馨と香緒里の事情(9)

"香緒里"は受付で河野と一緒に座っていた。目の前のPCに映っているソフトの使い方を河野から説明を受けていた。
会議室の予約や全社員のスケジュールを見ることができた。
だが説明を受けなくても"香緒里"には大体分かりそうだった。
「....ということ。大体分かった?」
「はい、何とか大丈夫だと思います。分かんなかったら、教えてくださいね。ところでメールとかは使わないんですか?」
「社内の連絡なんかはほとんどメールよ。そっか、まだ佐野さんのアドレスを教えてなかったね」
河野は社員の名簿を調べてくれた。
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馨と香緒里の事情(8)

ゴールデンウィークが明け、新入社員たちは朝は一度人事部に集まった。しばらくすると、それぞれの職場の上司が迎えに来た。そして、それぞれの職場に分かれて行った。早坂と香緒里は当然職場も入れ替わらずをえなかった。すなわち早坂は"香緒里"として人事(受付)へ、香緒里は"早坂"として研究所に行った。
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馨と香緒里の事情(7)

「じゃあそこに座って」
「今度は何すんねん?」
「何ってお化粧に決まってるじゃない」
「口紅くらい自分でつけるって」
「今日はきちんとベースからやってあげる。早坂くんがずっと私のままだったら自分でお化粧くらいできないといけないし、明日から私が徹底的に教えてあげるね」
「そんなんええよ」
「あなたが良くっても私が良くないの!分かった?」
「....ああ、分かった」
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馨と香緒里の事情(6)

早坂は香緒里になって2日目であったので、髪のセットもきっちりとし、化粧も口紅だけだったが行ってきた。服装はオフホワイトのタンクトップと膝より10センチほど上のキュロットスカートに昨日のカーディガンを着て、すぐに早坂のマンションに行った。香緒里もすでに起きていて、そこで、早坂と香緒里は今後のことについて話をした。
お互いのことも分からないし、早坂にとっては女性の身嗜みについても分からない。そのため、離れたところで暮らすより、二人で同じところにいた方が良いだろうということになった。
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馨と香緒里の事情(5)

マンションに戻るとすぐに香緒里は早坂のヘアメークに取り掛かった。
ボサボサの髪にブラシを入れただけで、それなりに見えるようになった。さらにヘアフォームをつけ、手櫛で整えていった。髪の艶が蘇ったように綺麗になった。
「それじゃ、これつけて」
香緒里は早坂に買ってきた口紅を渡した。
「こんなんつけなあかんのか?」
「女性は外に出るときは必ずお化粧してるでしょ?今日は仕事じゃないし、近くに行くだけだから口紅だけで許してあげる」
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馨と香緒里の事情(4)

香緒里はマンションの前にタクシーが止まる音に気がついた。タクシーからボサボサ頭の元自分が飛び出してくるのを見て驚いた。あまりにもだらしない姿だったのだ。
(もう女性が外に出ていくときはブラッシングくらいちゃんとしてよね)
香緒里は箪笥から小綺麗なジャージの上下を取り出して着た。
やがて自分の部屋のインターホンが鳴ったので、ドアを開けた。
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馨と香緒里の事情(3)

同じような時刻、香緒里は自分が早坂馨になっていることを確認してガッツポーズを取っていた。
香緒里が目を覚ましたのは早坂より1時間ほど早かった。しかし、香緒里の場合、すぐに自分の身体の異様に気がついた。股間に異様な力強さを感じたためだ。いわゆる"朝立ち"だ。もちろん生まれて初めての朝立ちに、香緒里はどう処置していいのか分からなかった。
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